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マニュアル=現場が問われる時代に突入です。

マニュアル=現場が問われる時代に突入です。

「防災計画」の過失、高裁が一転認定 大川小・津波訴訟

 東日本大震災で津波に襲われた宮城県石巻市立大川小学校で犠牲となった児童と教職員84人のうち、23人の児童の遺族が市と県に約23億円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が26日、仙台高裁であった。裁判長は学校の震災前の防災対策に不備があり、市教育委員会も指導を怠ったとして責任を認め、一審より約1千万円多い約14億4千万円の賠償を命じた。

<仙台高裁の判決のポイント>

 ・校長らは、児童生徒の安全確保義務があり、専門家が示すデータも独自に検討しなければならない。

 ・大川小の立地を考慮すれば、校長らは津波の危険性を予見できた。

 ・校長らは避難経路などを危機管理マニュアルに記載せず、市教委も不備を指摘しなかった。適切に定めれば被害は避けられた。(2018年4月26日 朝日新聞)

 大川小学校の裁判は、高裁判決までたどりつきました。そして、そこで裁判所が示した判断の中で、着目すべきは2点あります。

 1点目は、震災前の防災対策に不備があったということ。これには、マニュアル自体に不備があったということと、マニュアルの通りに動けるような訓練を組織的にしていなかったということの2つの意味があります。

 この点と同じ視点で、保育施設も社会から責任を問われていると思います。平成28年3月31日に内閣府から出たガイドラインに沿ったマニュアルはあるか。そして、その内容に沿った保育ができているか。という視点です。この責任は、事故が起きてから問われる事故の前にある責任ですから、取り返しがつきません。ぜひ、見直してください。

 2点目は、市教育委員会も指導を怠ったという点です。つまり、対策を講じなければならない現場の責任と、対策を講じさせなければならない指導の責任という二面があるということです。

 これも保育施設に置き換えると、保育施設を指導・監査する行政は、事故の前にどのような対策を求めていたのかということが行政にも問われるということになります。

 いずれの場合も、事故や災害が発生した後にどのような行動をしたのか。ということがこれまでは、厚く問われていましたが、これからは事故前の準備の方が重点的に問われることになるのではないでしょうか。

 このGWにみなさんも自分たちの施設の安全に対する準備がどの程度できているのか、チェックしてみてください。

2018.05.04