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補助金適正化法てなぁ~に?

補助金適正化法てなぁ~に?

 最近、『補助金適正化法』という法律の名前をよく耳にしたり、目にしたりする機会が増えていませんか?おそらく、森友学園の籠池夫婦が大阪地検特捜部に取り調べられ、逮捕された報道でよく耳にしたり、目にしたりしているのではないでしょうか?補助金適正化法の正式名称は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」です。補助金を国や地方公共団体から受け取っている立場の方には切っても切れない法律です。補助金適正化法を知らなかったからという言い訳は通用しません。補助金適正化法を知っていようが、知らなかろうが、補助金適正化法違反で逮捕・起訴されてしまう可能性があるからです。

 補助金適正化法は補助金のルール全般を規律している法律です(補助金適正化法第4条)。どのようにすれば補助金を受け取ることができるのか(補助金適正化法第5条)、国や地方公共団体がどのようにして補助金を交付する決定をするのか(補助金適正化法第6条)等々、補助金のルール全般を規律している法律なのです。当然、補助金を不正に受け取ったり、使用した者等に罰を与えるためのルールも補助金適正化法には存在します(補助金適正化法第29条~33条)。森友学園の籠池夫婦は補助金適正化法29条の罰(5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金)をかされる可能性があります。

 

 お金をだまし取ったのであれば詐欺罪(刑法第246条)(10年以下の懲役)があります。それにもかかわらず、なぜ補助金適正化法の罰があるのでしょうか?それは、詐欺罪で有罪にすることが大変だからです。詐欺罪で有罪にするためには、「お金をだまし取ろうとした。」という心の中のことを証明しなければなりません。これが、非常に大変なのです。例えば、みなさんが心の中で何を思っているのかを、他人はわかりません。他人は、あなたの心の中を、あんな仕草をしていたから等の理由で、「おそらく」こんなことを思っているんだろうな?と想像します。しかし、刑事裁判では、「おそらく」こんなことを思っているんだろうな?では有罪にすることはできません。数々の証拠から、こんなことを思っていたんだ、ということを証明しなければならないのです。そのため、「お金をだまし取ろうとした。」という心の中を証明し、詐欺罪で有罪にすることは至難の業なのです。

 一方、補助金適正化法の罰は、不正の手段により補助金を受け取ったことを証明するだけで有罪にできるのです。例えば、籠池夫婦の場合なら、わざわざ虚偽の契約書を作成して、その契約書を国や地方公共団体に提出して、補助金を受け取ったことだけを証明すれば有罪にできるのです。つまり、補助金適正化法の罰は、詐欺罪で有罪にできない人でも、簡単に有罪にすることができるようにするために存在しているのです。

 補助金適正化法は補助金を不正に受け取ったり(補助金適正化法第29条)、目的以外に使用したり(補助金適正化法第30条)した者に罰をあたえます。さらに、補助金を不正に受け取ったり、目的以外に使用した場合、補助金の返還を求められます(補助金適正化法第18条等)。返還をするまでは、返還していない金額の10,95%(年間)余分に返還しなければなりません(補助金適正化法第19条)。また、返還しない場合の取り立ては税金と同レベルの厳しいものになります(補助金適正化法第21条)。このように、補助金適正化法は補助金を不正に受け取ったり、目的以外に使用すること厳しく禁じています。それは、補助金は国民の税金でまかなわれているものだからです。そのことをしっかりと忘れないようにしましょう、ということもしっかりと補助金適正化法第3条・11条に書かれています。

 籠池夫婦は補助金適正化法違反のみならず、詐欺罪でも逮捕されてしまいました。籠池夫婦が今後どのようになるかはわかりません。しかし、今回の事件を参考に、今一度、補助金とは他人のお金であることを再認識し、襟を正して、それぞれの園の運営をしていただきたいと思います。

2017.08.09