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幼児の勘違い、防災のヒントに 幼稚園が27年記録

 「運動会、何か(種目)出るの?」と聞くと「おやつが出るよ」。「よく目を動かして周りの友達をみてごらん」と言うと目玉だけきょろきょろ動かす。思わず笑って済ませてしまいがちな幼児の勘違い。でも、そもそも大人の話し方がわかりにくいから起きるのではないかと、こうした出来事を27年間記録し続けている幼稚園があります。命を左右しかねない災害時の対応にも生かそうとしています。

 京都府宇治市の広野幼稚園は保育所を含めて約500人の子どもが通う。1989年から、教諭ら職員が意外に感じた子どもの言葉や行動を記録している。エクセルファイルに保存された記録は約5500件。大人の話し方が不十分だったと判断したら、「目的語、修飾語の欠落」といった注意点も記入する。教諭は避難訓練や遠足といった行事の前に、今まで記録した出来事を用語で検索して印刷するなどして、読み返す。

 発案したのは吉村園長(81)。運動会で整列した園児たちが、目の前にいた担任が別の仕事で移動するとついて行ってしまう様子などをたくさん見てきた。「ここで待っていてね、の一言があれば済むこと。保育現場で必要な『子ども目線』をしっかり共有しようと思い当たりました。経験が浅い若手の先生は、子どもの反応を想像しにくいことがある。事前に色んな言動を把握すれば備えることができます」と話す。(2016年9月17日 朝日新聞デジタル)

 事故にコミュニケーションエラーは付き物です。そもそも日本人のコミュニケーションは、相手を思いやる文化が背景にあるので、話し手が言葉足らずの話をしても、おそらくこういうことを話しているのだろうと推測し、話を前に進めていく習慣が知らぬ間に身についています。

 たとえば、自分の名前を答える場合。「おなまえは?」-「たかし」-「良く言えましたね。エライ!」という風に言語を習得していきます。しかし、学校で習う英語では、「私の名前はたかしです」という風に習います。つまり、日本語では主語抜きですが、英語には主語がしっかり入っています。

 このように、主語、述語、修飾語、目的語などを正確にいう習慣を身につけていなければ、災害時のような瞬時の判断と指示が求められるケースでは役に立ちません。

 しかも、コミュニケーションの相手が幼児となると、言語に対する理解力が未熟なため、「わかりやすさ」はさらに高度なものが求められます。要するに、災害時などの緊急を要する場面で、幼児に対し、指示を出さなければならない職業についている保育士や幼稚園教諭、保育教諭は、わかりやすい日本語力を身につけておかなければならないということです。

 この能力は、一朝一夕には身につきません。日常から、人の話す言葉に耳を傾け、自分の話す言葉に対する相手の反応を観察することによって、少しずつ身について行きます。相手に伝わりやすい「やさしい日本語」を話すように習慣付けてください。

2016.10.14