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今年の夏は熱中症死亡事故が多発しています

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男性死亡 車内で熱中症疑い 上尾の障害者施設 6時間降ろし忘れか

 埼玉県は13日、上尾市の障害者施設を利用している男性(19)が熱中症の疑いで死亡したと発表した。施設職員が男性を送迎者から降ろすのを忘れ、約6時間にわたり車内に取り残されたとみられる。県警が施設関係者から事情を聴くなどして、詳しい経緯を調べている。

 県によると、13日午後3時20分ごろ、上尾市戸崎の障害福祉サービス事業所「コスモス・アース」で、送迎車内で倒れている男性を施設職員が発見し、119番した。男性は同市内の病院に搬送されたが、午後4時に死亡が確認された。

 男性は午前9時ごろに、他の利用者と共に送迎車で施設に到着した。降車する際に施設職員が車内に残っていた男性に気付かず、男性を降ろし忘れたとみられる。

 コスモス・アースはNPO法人で、知的障害者らが通う作業所。男性には知的障害があるとみられ、6時間以上車内にいたとみられる。

 地元消防によると、男性は発見時、意識がない状態で体温が41.1度だった。車は敷地内の駐車場に止めてあった。

 熊谷地方気象台によると、13日は鳩山で最高気温35.2度を記録。上尾市と隣接するさいたま市では同日正午に32.4度を観測した。

 県によると、施設は2014年に開設し、定員は40人。知的障害のある人などを対象に、介護サービスを提供していた。

 ホームページでは「障害のレベルや性格に合わせて無理なく楽しく作業をすることができるよう、障害者の自立支援をサポートします」として、農作業などをする利用者の写真を掲載している。(2017年7月13日 埼玉新聞)

 事例のポイントは、被害者が19歳であるのにも関わらず、自らカギのかかった車から脱出できなかった。という点です。通常では考えられないことですが、それだけ被害者の知的障害のレベルが高かったということがわかります。

 社会福祉施設の利用者の方々は、日常生活に支援を必要としています。そこで働く職員は、その方々が必要としているレベルに応じた支援を提供しなければなりません。

 特に安全対策につきましては、ひとりひとりの状態に応じた支援を実行することにより、利用者の安全を確保しなければなりません。

 それが社会福祉と安全の関係なのですが、今回の事故ではそういった基本的なことができていませんでした。送迎を担当した男性職員が車から被害者を降ろさなかったことも事故原因のひとつですが、他の職員が6時間もの間、被害者不在に気付いていないことも原因です。

 2005年8月10日に上尾市の保育所で熱中症により園児が死亡した事故でも、職員の人数確認(動静把握)ができていないことが原因でした。

 今回、同じ上尾市で、しかも同じ社会福祉施設で、同じ熱中症による死亡事故が発生したのは、過去の事故事例が安全対策にまったく生かされていなかったということです。

 たかが人数確認と思うかもしれませんが、されど人数確認です。安全対策で人数確認は基本中の基本です。事故現場では、基本動作は当たり前すぎて、おろそかにしてしまった結果、事故が発生するということが繰り返されています。みなさんも、もう一度、基本動作ができていることを確認し、徹底してください。

 

2017.08.11