事故・トラブル最前線

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事故

刑事責任の面でも問われるかもしれません。

刑事責任の面でも問われるかもしれません。

福岡 保育園事故 園長ら4人を書類送検

 福岡市南区の認可保育所「こばと保育園」で昨年11月、男児(2)が排水溝に頭が入った状態で見つかり、一時意識不明の重体となった事故で、福岡県警は31日、危険防止対策などを怠ったとして、女性園長(56)と担任だった30~60代の3人の女性保育士を業務上過失傷害容疑で福岡県警に書類送検した。

 送検容疑は、園長は排水溝のふたが動かないように重しをするなどの危険防止対策や保育士への指導教育を怠り、保育士3人は男児の見守りを怠ったとしている。4人とも容疑を認め、園長は「多忙な業務に追われて対策を怠った」、保育士は「他の園児に気を取られていた」などと供述しているという。

 県警によると、排水溝には通常、樹脂製のふたが付いているが、男児の発見時は外れていて、横に置かれた状態だった。

 男児は当時1歳7カ月で、0歳児クラスに在籍。昼食後に昼寝し、午後2時10分ごろに起きて園庭で遊んでいた。1人で歩くことができたという。男児は現在は回復している。(2017年5月31日 毎日新聞)

 11月に福岡で起きた事故に対して、刑事責任を問われる可能性が出てきました。書類送検を受けた検察が起訴すれば、刑事裁判が始まります。そこで、有罪判決が出れば、今回の事故は、事件になります。

 今回の書類送検の内容で、注目すべき点は、「保育士3人は男児の見守りを怠ったとしている」というところです。これは、保育士の園児に対する「動静把握義務」と呼ばれ、2009年12月16日の上尾市熱中症裁判でも判決文の中に書かれています。

 上尾市の裁判で原告側弁護人を務めた寺町東子先生のブログには、以下のように書かれています。「一般に、保育士は、子ども一人一人を見て、その関係性も把握し、子どもたちの動静を常に把握しなければならないこと、担任同士の連携をしなければならないこと、担任以外も、保育所全体で取り組まなければならないことなど、まともな保育の水準を提示し、その後、上尾保育所でのあまりにもでたらめな保育の状況を詳細に判示して、『一般的に保育士に求められるべき注意義務の基準に照らして』、悪質、重大な過失ありと断定しています。(以上、寺町先生のブログより抜粋)」

 2009年の裁判で求められた注意義務が、また、審議されようとしています。裁判になるか、ならないかは、別として、問題は、上尾の裁判結果が出てから7年経っても、動静把握義務はすべての保育施設・保育職員に完璧に徹底されていないということです。

 この福岡の保育園に務める保育士だけ動静把握義務が徹底されていなかったと考える方が不自然でしょう。保育施設の危機管理において園児の動静把握は最優先順位にあるものです。だから、刑事罰が問われるようなことにまで発展するのですが。

 国家資格である保育士資格を持っている保育士が動静把握を徹底できないのであれば、それは、保育士の養成課程にも問題があると思います。「園児1人1人の行動を常に把握する」という基本的な行動を徹底させてから、資格は与えられるべきだと思います。

 それができないことによって、園児も保護者も保育士も園長も不幸になるような事故が発生いたします。動静把握という基本動作を常にできるようにすることが、安全な保育の実現の第1歩だとわれわれは考えています。

2017.06.30