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事故

2016年に起きた保育施設での死亡事故Ⅱ。

2016年に起きた保育施設での死亡事故Ⅱ。

 5月15日のアイギスブログでも内閣府が発表した保育施設での園児死亡統計を発表いたしました。前年よりも1人少ない13人で、そのうち10人は睡眠中。うち4人はうつぶせの状態でした。

 この統計の中で、もうひとつ気になる数字があります。それは、施設の種別です。13件の死亡事故が発生した施設は、認可外が7件、認可が5件、行政が認証した保育ママが1件でした。前年までの統計から見ると、認可施設での死亡事故の件数が増えています。

 この現象の背景にあるものとして、考えられうるもうひとつの統計があります。それは、認可施設と認可外施設の数の推移です。

 平成27年の認可施設(保育所、幼保連携型認定こども園、地域型保育施設)の数は、28,783件。平成28年は、30,859件で2,076件の増加。同様に認可外施設は、平成27年が8,038件で平成28年が6,923件と1,115件の減少。

 認可外施設の減少には、もちろん単純な廃業があると思いますが、姫路市の「わんずまざー保育所」のように認可外から認可施設になったものも一定数あると思います。つまり、待機児童解消の対策として、認可施設の中に認可外施設が入ってきているのが現状です。

 もちろん、認可外の施設が安全性を欠いているとは思っていません。しかしながら、昨年までの事故統計では、認可外施設の方が、認可施設を圧倒しているのに、平成28年の統計は均衡しています。この状況を解説する1つの仮説として、認可外の保育レベルのまま、認可施設に移行し、安全性が担保されず、死亡事故が発生した。という説が成り立つのではないでしょうか。

 その影には、認可施設を増やすところまでは熱心にするけれど、認可された後には、手が回らず、指導監査も完全に実施できていない地方行政の量的な指導能力の限界も影響しているのではないでしょうか。

 われわれでは、死亡事故が起きた認可施設がいつ認可されたのかまでは、知る由がありません。事故の分析にあたる中央行政の方々が責任をもって、そのあたりも分析の材料にしていただければ、効率的な事故予防策が出てくるのではないかと考えます。

2017.05.26