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プール事故裁判の判決が出ました

プール事故裁判の判決が出ました

園児水死、幼稚園側に6300万円支払い命令 横浜地裁

 神奈川県大和市の私立・大和幼稚園のプールで2011年7月、男の子の園児(当時3)が水死した事故をめぐり、両親が園を運営する学校法人西山学園と元園長(69)、元担任(26)らに計約7400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、横浜地裁であった。裁判長は、学園と元園長、元担任の責任を認め、計約6300万円の賠償を命じた。

 事故当時、男児は他の園児約30人と水深約20センチのプールで遊んでいた。判決は、園児がプール内で入り乱れるなか、当時新任教諭だった元担任がビート板などの片付け作業のために目を離した時に男児がおぼれたと認定。園児を監視する義務を怠ったと判断し、「事故はこの不注意に起因するところが大きい」と述べた。

 裁判で両親側は「担任以外にも、園児を常時監視する職員を配置する義務があった」などと元園長の過失も主張していた。だが、判決は「担任だけでも監視可能だった」と退け、元園長については元担任の監督者としての連帯責任を認めるにとどめた。両親は、元園長に関する判断を不服として控訴する方針。

 この事故をめぐっては、元園長と元担任が業務上過失致死罪にも問われた。元担任には2014年3月、監視を怠ったとして罰金50万円の有罪判決、元園長には2015年3月に無罪判決が言い渡され、それぞれ確定している。

 判決を受けて西山学園は「内容を真摯に確認し、当園の責務を果たしたいと考えます」とコメントを出した。(朝日新聞 2017年4月13日)

 事故発生から、約6年たってようやく第一審が終わりました。判決は、園側の敗訴です。この裁判のポイントを解説してまいります。

 まず、園はなぜ裁判をしたのでしょうか?これまでの保育施設で発生したプール事故は、裁判をして、施設側が勝つことはほぼありません。では、なぜ、裁判をしたのでしょうか。もちろん、被害園児の両親から訴えられたから、応訴したということだと思いますが、裁判しても勝つ可能性がほとんどない以上、示談すべきだったのではないでしょうか。

 裁判で負けても、示談しても、保険に加入していれば、賠償金を支払うのは保険会社なのですから、双方が深く傷つく裁判という選択肢は取るべきではないと思います。

 もちろん、裁判を避け、示談するためには、事故発生直後からの初期対応がうまくいくことが絶対必要条件になります。そういう点では、この事故の場合、幼稚園側の初期対応が失敗したということが読み取れます。

 つぎに、新任教諭であっても安全管理の責任は負わされるという点です。これはつまり、保育施設で働く以上、最低限の安全管理義務は果たさなければならないということであり、それができない場合には、責任が問われるということです。

 そうなると、保育施設で働く方々を育成する養成校でも、勤務する施設でも、最低限の安全教育をほどこす必要があるでしょう。実態としては、社会が求める安全管理義務よりも、施設が履行する安全管理義務のほうが低いということでしょう。本来ならば、これは逆でなければならないのです。

 保育施設の職員が安全に働ける環境を整えていないのにも関わらず、保育に携わる人が不足していて困っていると言っている業界は、本末転倒です。働くことに関するリスクを少しでも取り除き、安心して保育や教育に集中できる労働環境を整えることが、保育に携わる人を増やす近道だとわれわれは考えます。

2017.04.21