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社会福祉法人のお金のトラブルは命取りです。

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不正経理 保育園運営 「夢工房」 理事長ら1.3億円流用

 全国で保育園などを運営する社会福祉法人「夢工房」の第三者委員会は19日、理事長と親族が運営費から1億3984万円を不正流用していたと発表した。法人は理事長らを解任する方針。

 第三者委は県などの監査を受けて設置された。調査報告によると、理事長の実母と養母は兵庫県姫路市の保育園で勤務実態がないのに給与を受け取っていた。長女と長男は大学院や専門学校の在学中に法人職員として給与を受け取り、学費も「専門学校資格取得のため」などの名目で法人から得ていた。こうした架空給与や手当は計6383万円に上った。

 また長女が乗る高級国産車(価格735万円)や新婚祝いの家具・電化製品(210万円)は、法人や保育園の備品として購入。妻の高級婦人服(123万円)は、妻が統括する保育園で「アナと雪の女王衣装」などの名目で経費計上されていた。

 第三者委には職員から、新設園では絵本は中古、おもちゃは100円均一店で調達。給食調理のマスクは自己負担だった。との声も寄せられ、報告書は「法人は私物化され、利用者は二の次だ」と指摘した。自治体からの補助金の不正受給も判明し、詐欺や業務上横領が成立する可能性もあるという。(2016年10月19日 毎日新聞)

 2015年度の企業倒産件数は、8,812件で前年の9,731件よりも919件(9.44%)減少しています。そのうちコンプライアンス違反関連での倒産は289件で前年度比3割増で過去最多を更新。違反類型では「粉飾」が85件で最多。資金流出や詐欺などの「資金使途不正」は67件判明し、前年度から4倍に大幅増加しています。

 一般企業でもコンプライアンス(法令順守義務)違反は、倒産という最悪の結果を招きます。特に粉飾決算などは、ある特定の内部人物によって、意図的に行われるものなので、非常に悪質です。しかしながら、意図的に行われるという特性から、予防は容易にできます。不正しなければいいのです。

 社会福祉法人と一般企業の不正会計は、根本的に異なると思います。社会福祉法人は、施設整備や運営などにも公的資金(税金)が使われています。一般企業が施設を整備するのに、公的資金が補助金として支給されるなんてことはありません。社会福祉法人があつかっているお金は公金なのです。それゆえ、社会福祉法人のコンプライアンス体勢は、一般企業より厳格なものが必要なのではないでしょうか。

 事例の法人が運営する沖縄の施設内には、バーカウンターが設置されていたそうです。バーカウンターと保育にどのような関連があると当該法人が説明するのかわかりませんが、社会通念上考えると、必要ないのでないのでしょうか。

 保育施設が開園する前には、行政による立ち入り調査も行われます。運営にも通常監査も行われています。社会福祉法人の運営には、少なくとも行政の管理責任があると思います。社会通念上考えてすぐにわかるようなおかしい運営をしている法人には、認可取り消しも視野に入れた指導をすべきではないでしょうか。

2016.12.02