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新型コロナウイルス対策の影に隠れたリスク

新型コロナウイルス対策の影に隠れたリスク

 新型コロナウイルス対策として、飛沫感染を防ぐためにマスクを着用するということが常識になっています。

 会話や咳やくしゃみをする際に、口から細かい水滴(しぶき)が飛び散ります。この飛沫の中に病気の原因となる細菌やウイルスなどの病原体が含まれていた場合、人の気道の粘膜や、目の粘膜などから細菌やウイルスが侵入することによって感染するのが飛沫感染です。

 マスクを着用することで飛沫を防ぐことができるので、新型コロナ対策としてマスクを着用することは有効な手段です。そのため、みなさまの園でも職員の方はマスクを着用して保育にあたっている園が多いのではないでしょうか。

 さて、新型コロナ対策として、職員は園児と一緒に給食を食べないで欲しいという指導が行政から出ている市長村がございます。その趣旨は園児と一緒に給食を食べる際、職員はマスクを外すため飛沫感染のリスクが高まるためです。

 国立感染症研究所「積極的疫学調査実施要領」で濃厚接触者とは、「手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策(マスクなど)なしで15分以上接触があった人」と定義されています。この定義に基づき保健所は濃厚接触者を認定していきます。濃厚接触者と認定した場合、保健所はPCR検査を実施します。

 保健所からすること、職員が保育中にマスクをしていても、マスクを外して園児と給食を食べてしまえば、給食を一緒に食べた園児は濃厚接触者になってしまい、PCR検査の実施件数が増えてしまいます。

 そのため、保健所から保育課に職員は園児と一緒に給食を食べないで欲しいという要望が入るわけです。

 保健所の方は濃厚接触者の認定、PCR検査、陽性者の対応など猫の手も借りたい程、忙しい状況なのは理解できます。そして、新型コロナウイルスの収束が至上命題になっていることも理解できます。

 しかし、保育施設における至上命題も新型コロナウイルスの感染防止なのでしょうか?

 ここでみなさまに数字をご紹介いたします。

0と3です。

「0」は保育施設における新型コロナウイルスの死亡件数です。

「3」は保育施設における昨年の誤嚥事故による死亡事故件数です。

どちらのリスクの方が大きいかは一目瞭然です。

 誤嚥事故は給食時やおやつ時におきます。そして、給食時やおやつ時には誤嚥事故以外にも食物アレルギーのリスクも存在します。誤嚥事故や食物アレルギーを防ぐために職員は園児や食べ物をよく観察しなければなりません。園児や食べ物を観察するためには職員は園児のそばで一緒に給食を食べる必要があります。つまり、行政からの、職員は園児と一緒に給食を食べないで欲しいという指導は、たしかに新型コロナ対策としては有効ですが、誤嚥・食物アレルギーのリスクは増大させてしまっているのです。

 保育施設における至上命題は新型コロナウイルスの感染防止ではなく、園児の命を守ることです。だとすれば、リスクのより大きい誤嚥・食物アレルギー対策を優先するべきです。

 保健所は保健所の都合で協力を求めてきますが、保育施設は保育施設のリスクにしっかりと目を向け、新型コロナウイルスというリスクだけに目を奪われないように判断・行動してください。

2021.06.02