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リーダー層育成のヒント ~三つの鏡・三鏡の考え方~

リーダー層育成のヒント ~三つの鏡・三鏡の考え方~

 本好きのスタッフがお送りします、ブックレビューです。

 今回は 座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」出口治明(角川新書)です。
 こちらの本は脇が読んでいるのを、私が横取りをして読みました。脇はたくさん本を買うので、読みたいと思った本を良く借りています。

 『貞観政要』は中国史上もっとも国内が治まった「貞観」(627~649年)の時代に、ときの皇帝・太宗と臣下たちが行った政治の要諦(政要)がまとめられた書物。北条政子、徳川家康、明治天皇も愛読しており、「時代を超えた普遍のリーダーシップ」が凝縮されているとされています。

 この本は「世界最高のリーダー論」について、『貞観政要』から著者である出口氏が生命保険会社の管理職であった時代に、学び取った内容が記されています。サラリーマンである私にとっては、この出口氏が管理職時代に体験しているエピソードが「ああ、わかるわかる」「そうなんだよね、あるある」と共感性の高い内容なのですが、園で働く先生方もこの点は同様なのではないかと思います。

 例えば、「機嫌の分かりやすい上司は楽勝」というエピソードがありまして、これは部下が上司に相談に行くときは「上司が笑っている時を選べ。そうすれば提案は通りやすい」という内容。対人援助職である保育施設の先生方は、この点読み取る能力の高い方々が大変多いと感じています。覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 中国史に疎い私はこの本で学ぶことが大変多かったのですが、印象に残ったお話を一つご紹介いたします。『三つの鏡』の話です。

 『貞観政要』には三つの鏡の話が出てきます。銅の鏡、歴史の鏡、人の鏡の話です。

 ・銅の鏡 :鏡に自分を映し、元気で明るく楽しい顔をしているかチェックする。

 ・歴史の鏡:過去の出来事しか将来を予想する教材がないので、歴史を学ぶ。

 ・人の鏡 :部下の厳しい直言や諫言(上司をいさめる言葉)を受け入れる。

 これらの3つの鏡、つまり、今の自分の表情(状況)、歴史、第三者の厳しい意見を知ることが、リーダーには不可欠である、ということを示しています。

 保育業界でよく、「リーダー層が育たない」というお話しを伺います。これはリーダー層になる年代が結婚や出産の時期と重なること、人口動態上その年代がごそっと抜け落ちていること等が考えられますが、「どのように育てればよいかわからない」「指導の仕方がわからない」というお話もよく耳にします。

 新年度も始まったことですから、この三鏡を取り上げて「リーダーとは」という概論の研修をするのはいかがでしょうか。

 例えば銅の鏡について、

 ・元気で明るく楽しい顔とは具体的にどういう顔のことか。

 ・自分はどういうことがあると「元気で明るく楽しい顔」になるのか、またなれないのか。

 ・「元気で明るく楽しい顔」になると、子ども・保護者・職員にどんな影響があるか。良い点と悪い点を考えよう。

 などなど・・・古来からの「リーダーに必要な素質」と自己理解をセットにすることで、より自分事として落とし込むことができる内容になるのではないでしょうか。
 また、考えた内容を話し合うことで、組織づくりとして他者理解が進むヒントにもなりそうですね。保育はチームワークですので、職員同士の理解が進んでいることは良いことです。

 座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」出口治明(角川新書)にはまだまだご紹介したいリーダー層育成のヒントがありましたので、時をみてまたこちらに掲載したいと思います。お楽しみに。

 

 

2022.04.12