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保育士が園児を虐待するメカニズムと同じ

保育士が園児を虐待するメカニズムと同じ

路線バス 車いす男性の乗車拒否

 千葉県松戸市を拠点に運行する「松戸新京成バス」で、運転手が車いすの男性の乗車を拒否していたことがわかり、会社側は「心から反省している」としたうえで、再発防止を図るとしている。

 「松戸新京成バス」によると今月22日、車いすの男性が付き添いの女性と共に松戸市内のバス停から乗車しようちしたところ、50歳の運転手が「あと30秒で発車なので無理です。ごめんなさい」と伝え、そのまま出発したという。

 その様子を見ていた後続のバスの運転手が2人を乗せたあとで事情を聞いて、会社側に報告したという。

 乗車を拒否した運転手は会社の聞き取りに対し「発車が迫る中で、車いすのスロープや固定ベルトの準備が間に合わないと思った。非常に誤った判断で後悔している」と話したという。

 乗車拒否にあった2人とは連絡がとれていないということですが、今回の件について、「松戸新京成バス」は「信頼を大きく裏切る行為で、心から反省している」としていて、すべての運転手や運行管理者に対して指導を徹底し、再発防止を図る。(2019年2月26日 NHK)

 この運転手の犯したミスの原因は優先順位を見誤ったことにあります。車いすの乗客を乗せるよりも、運行ダイヤを守ることを優先した結果生じたミスです。融通の利かない運転手が事務的にバスを運行した結果、会社の信用を傷つけるという結果を招いたわけです。

 このような現象は、価値観の優先順位をあらかじめ決めておかないことによって引き起こされます。事例の場合、運行ダイヤを守ることよりも、車いすの乗客への対応を優先するべきでした。これ以外にも運行ダイヤよりも安全を優先すべきですし、バスの運行途中で病人が出たときなどは、処置を優先させるべきです。

 つまり、緊急事態への対応>安全>身障者の方への支援>通常運行という風な感じで決めておかないと、とっさの判断ができなくなります。その結果、無難な行動を選んでしまうのです。

 これと同じようなメカニズムで、保育士が園児に虐待するという現象も起きます。「真面目」といえば聞こえがいいのですが、「融通が利かない」「自己中心的」というと、意味が変わってきます。

 保育を時間通りに進めることを至上命題にして保育現場で働く保育士は、臨機応変に状況判断することができなくなります。そして、自分のキャパ以上のことを園児がした場合に、力でねじ伏せようとするのです。

 どのようなことがあったとしてもしてはならないこと=園児に暴力を振るったりすること。を価値観として徹底しておかなければ、保育士による園児への虐待は起こってしまいます。通常業務を遂行するよりも優先されるべき価値観教育を職員に対して行っておくことも、現在の保育現場では必要不可欠な職員教育だと考えられます。

2019.02.01