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地域防災に取り残される保育施設

地域防災に取り残される保育施設

鉄道ストップ「計画運休」空振り恐れず混乱回避

 非常に強い台風が再び列島に襲来し、首都圏のJR在来線や東海道新幹線は「計画運休」に踏み切った。企業活動などに大きな影響を及ぼす一方で、運行途中の電車が駅間で止まるなどの混乱を防ぎ、乗客の安全を確保する意味合いがある。異常災害が頻発する中、こうした事前の運休告知が定着しそうだ。(2018年10月1日 産経新聞)

 このブログを書いているのは、台風が関東に直撃している10月1日の未明です。9月30日の東京都内でアイギス周辺では、JRが20時以降運行を取りやめるということを正午には発表。大型ショッピングモールは18時で閉店。吉野家などの飲食店も17時には閉店。コンビニの一部も閉店しておりました。

 台風や雨などによる災害は予測可能型のもので、事前の非難活動が有効です。地域防災の観点から公共機関や商業施設が台風の暴風域に入る前に閉め、そこの従業員も安全に帰宅できるうちに帰すというのが基本です。

 台風24号では、タイムライン防災という考え方に従って、この基本的な動きが各所で見られました。深夜に営業しているコンビニの方が異常で、不謹慎にも思えました。地域全体で災害に備えることで被害を最小限に抑えるという計画避難ができつつあるということは、喜ばしいことだと思います。

 さて、こういった災害対応型の地域ができつつある中で、保育施設は、働いている保護者が職場にいけなくなるという理由で、行政からは明確な休園指示が出ることはありません。

 私が知っている保育園では、「休園するなら、保護者全員から承諾書をもらってください」と言った行政もあるくらいです。たいていの場合、「休園はしないでください」か「休園するなら園の責任においてしてください」と言われます。

 地域全体で計画避難が進む中で、保育施設だけが取り残される状況ができつつあります。本来であれば、中学校よりも、小学校よりも、保育施設が真っ先に休園を決めるべきです。なぜなら、最も弱い園児という存在が集まる場所だからです。

 園長の中には、「家庭にいるよりも園にいた方が安全だ」という無謀な方も正直、いらっしゃいます。人間的に最も弱い園児が大勢集まるのが保育施設です。これを危機管理上では、「集中リスク」と言います。

 予測される災害が迫っている中で、集中リスクの状態をわざわざ作り出すのは、愚の骨頂です。保育施設が地域防災の先頭に立って、休園を決めるという当たり前の判断を当たり前にする社会に一刻も早くなって欲しいものです。

 ある保育施設が土砂災害や高波被害にあって、園児の半分が死亡したという被害が出てから、行政が休園指示を積極的に出すようになったという未来は絶対に間違っているとわれわれアイギスは考えます。

 園児が死亡するという被害よりも、保護者の非難を受けた方がましなのではないでしょうか。

2018.10.12