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リスクコストが捻出できない保育施設は、どうなるの?

リスクコストが捻出できない保育施設は、どうなるの?

JR西 安全投資400億円増額へ

 JR西日本は27日、2018年度から5年間で安全関連投資を400億円増やし、総額5300億円にすると発表した。同日発表した中期経営計画に盛り込んだ。昨年12月の台車亀裂問題を受け、新幹線の安全性向上のために200億円を計上した。

 中期経営計画は2023年3月期までが対象。2013~17年度の安全関連投資は4900億円だった。(2018年4月27日 神戸新聞)

 これは、JR西日本のリスクコストの記事です。2018年度から5年間で5300億円を安全のために使うということは、1年分にすると1060億円です。2017年3月期の同社の営業収益は1兆4414億円でしたから、全体の収益の約7.3%を安全に投資するということになります。

 さて、リスクコストの額や割合よりも先に、意味の話をします。なぜ、リスクコストを各企業は捻出するのか?です。

 それは、自分たちの事業を守るためです。たとえば、JR西日本の場合、事故が発生してしまったら、事業自体が大打撃を受けます。2005年に起きた福知山線の脱線事故により、同社はその衝撃がどれだけ強いのかを身を持って感じています。

 しかも、重大事故がドル箱である新幹線で起きたら、その衝撃は、瀕死の重傷を負いかねません。だから、事故が起きる前にリスクコストを確保し、安全投資に回すのです。そういった意味では、保険会社に頼らない保険の一種だともいえます。

 これと同じことを保育業界でも考えて見ましょう。人の命を預かるという点では、JR西日本と同じです。では、リスクコストは捻出できているのでしょうか?できていたとして、その割合は、全体の運営費の何%なのでしょうか?

 今、まさに日本中で増えている企業主導型の保育施設などは、どのように安全対策を考えているのでしょうか。企業主導型保育事業の開業を教えます。というコンサルタント事業者も数多くいますが、安全に関する項目は、どの会社のHPを見ても出てきません。

 私の目から見ると、保育業界には、リスクコストを捻出した上で、それを有効に活かし、事業を運営していこうという考え方が一般企業に比べて薄いように感じます。

 その部分は、行政も指導しませんし(わかっていても、指導したら新たな予算が必要になるため)、事業者も避けて通りがちです(他の部分にお金を使った方が有効だと考えているからでしょう。たぶん...)。だから、利用者が見極めなければならないのです(施設を選ぶことすらできない状態で)。

 このような、おかしい状況が現在の保育をめぐる環境です。ぜひ、少しでもリスクコストを捻出し、安全な保育を心かげてください。

2018.05.11