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「水が合わない」とはよく言ったものです

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水槽で魚1235匹死ぬ 酸素不足? サンシャイン水族館

 サンシャイン水族館は8日、同館の大水槽内で、トビエイやタカサゴなど計24種1235匹の魚が死んでいるのが見つかったと発表した。水中の酸素が足りなくなった可能性が高いという。生き残ったトラフザメなど約70匹で9日朝から展示を再開しており、今後少しずつ増やしていくという。

 同館によると、一部の魚の病気治療のため、7日朝に薬を水槽に入れており、効果を高めようと、たんぱく質を除去しながら酸素を供給する装置も一時的に停止した。別の装置で酸素を送っていたが、供給量が足りなくなったとみられるという。同館の担当者は「設計時には装置を止めても酸素濃度を保てる見込みだったが、当初より魚が大きくなったことで酸素が足りなくなったようだ」と話している。(2017年11月9日 朝日新聞)

 このニュースを見て、私は、保育施設の一斉退職のようだなと思いました。保育士の退職に関する相談が弊社に寄せられるシーズンは年に2回あります。それは、5月と3月です。どちらも、まとまった退職なのですが、原因が5月と3月では、まったく異なります。

 5月に辞める職員は主に4月に入った新人で、その理由は、外部から園という水槽に入って来たけど、水が合わなかったので、外に出る(辞める)というものです。この場合の大部分は、学生から社会人となり、一定の責任を引き受けなければならなくなったもののモラトリアム人間のまま抜け出せなかった。というものなので、あまり深く悩まず、抜けた穴を早めに補給するという行動に出るのが得策です。

 一方、3月に出る職員の大量退職は深刻です。新しいステージに進むので、3月で退職いたします。という個人的な事情での退職とは異なります。みんなで話し合い、園を困らせるために一致団結して、退職するのは、園側に問題があります。

 その主たる要因は水槽の水と同じ役割を果たす、園の「風土」です。つまり、職員の一斉退職は、園の風土によって作り出されていると言っても過言ではないのです。今回のニュースのように、水槽の中に酸素が行き渡らないと、その中の魚は、一斉に死んでしまいます。この状態から、元の状態に戻すためには、水槽の水を入れ替えるなどして、根本的な環境づくりから始めて、少しずつ、少しずつ、元に戻していくしか方法はありません。

 一斉に職員が退職してしまうようなことが起きたときには、場当たり的な手法や、対症療法ではかえって状況を悪化させることがあるので、注意が必要です。根本的な風土改善に一刻も早く取りかからなければならないのです。

 そのためには、目の前の状況を現実として受け止めることが肝心です。職員がまとまって園が困るように辞めたのは、園の風土に問題がある。それを作ったのは、施設長である自分に責任があるということを早く認識することです。そこができるか、できないかで、未来が大きく変わってくると思います。

 自分にとって不都合な事実から、目を背けずに、立ち向かう勇気を持つことこそが、第一歩として重要なことなのです。

2017.11.17