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保育中死亡 未検証6割 自治体 制度浸透せず

 2016年の1年間に保育所などで子どもが死亡した事故13件のうち、自治体が原因などを検証したのは5件と半数以下にとどまるとみられることが、内閣府などへの取材で分かった。再発防止を目的に保育事故の検証制度が同年からスタートしたが、自治体への浸透は道半ばで、専門家からは「法的な裏付けが必要」との声も上がっている。

 内閣府は同年3月末、保育所や幼稚園などで起きた死亡事故について、都道府県や市区町村が第三者による検証委員会を設置して、原因の分析や再発防止策を検討するよう通知を出し、検証方法も示した。

 内閣府が公表した2016年中の死亡事故13件のうち、検証が済んだのは東京都中央区と大阪市の2件、検証中が東京都大田区、千葉県君津市、神奈川県葉山町の3件。認可外の施設で起きた中央区、大田区の事故は都が、君津市の事故は県がそれぞれ検証委を設けた。検証制度スタートは同年4月からだったが、1~3月に起きた事故も対象に含める自治体もあった。内閣府は死亡事故は例外なく検証対象とするよう求めているが、法令による義務づけはない。毎日新聞の取材に対し、検証していないと答えた自治体は3区市。

 認可保育で事故が起きた東京都中央区と同稲城市は「病死」などを理由に検証の必要性がないと判断したとし、同板橋区は「警察の捜査が入り、必要な資料がそろわない」として、検証委の設置を見合わせていると説明している。

 残りの5件については、毎日新聞の情報公開請求に対し厚労省などが、個人の特定につながるなどとして事故が起きた自治体名を公表しておらず、明らかになっていない。(2017年9月5日 毎日新聞)

 過去に起きた事故の検証は、未来の安全にとって必要不可欠なものであり、検証なきところに安全は存在しません。その考え方に乗っ取って、国は保育現場で起きた事故の検証を地方自治体に通知を出しました。これは、画期的かつ正しい安全の作り方です。

 しかし、今回の取材で2016年に発生した6割の死亡事故は、手付かずのままです。事故の原因や背景にあったものは、時間とともにわかりづらくなっていきます。本来ならば事故発生日に検証メンバーを招集して、すぐに事故情報の収集にあたり、それが終わり次第分析に移り、安全対策を構築し、現場に周知徹底するということをしなければなりません。

 おそらく事故の検証を実施した自治体も、事故が発生してから検証メンバーを選び、それから会議を重ねていったのでしょう。でも、それでは遅すぎるのです。

 われわれは、仕事柄、事故の対応で事故発生の翌日や翌々日に事故現場に入ることが、しばしばあります。それでも、事故発生時の情報は定量的にも定性的にも不十分ですし、中には記録や記憶を明らかに改ざんしているものもあります。

 そういう意味でも事故発生から3ヵ月後に検証委員会など開いても、意味のある検証が十分に行われるとは思いませんが、やらないよりはマシでしょう。

 しかしながら、検証をしない地方自治体にも言い分はあると思います。検証がしたくても、地方にはそれができる人材がいない。経費もない。やり方もわからない。というのが検証を行う際のカベとして立ちはだかるのでしょう。

 事故の検証には、お金がかかります。むしろ、かけなければ十分な検証ができません。人の善意にたよるボランティア活動のような形式的な検証なら、やるだけムダです。

 死亡事故の検証とは、「事故で失われた命を、未来において安全という名で永遠に活かすようにすること」だと私は考えています。名ばかりの有識者の暇つぶしのような検証ならばする必要はないと思います。事故の検証はそれこそ命がけでやるべきテーマだと思います。

2017.09.22