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森友学園 「強制退園」民事訴訟 保護者側と和議協議へ

 民事再生手続き中の学校法人「森友学園」が運営する塚本幼稚園を巡り、元園児の保護者らが「強制的に退園させられた」などとして、学園側に損害賠償を求めた3件の民事訴訟について、管財人が学園の責任を認め、和解協議を始めたことが分かった。管財人は取材に「元園児らは学園の被害者。早期に解決したい」としている。

 3件ともに大阪地裁で係争中で、請求額は計約710万円。詐欺容疑で逮捕された前理事長(64)、妻(60)の両容疑者らが被告になっている訴訟もある。

 管財人は今月に入って地裁の許可も得た上で、保護者側に「訴訟での主張を認め、一定額で和解したい」と打診した。民事再生法では少額の弁済は認められており、管財人はその基準に沿って協議を進めるという。容疑者ら個人の賠償責任については対象としない。(2017年8月8日 毎日新聞)

 保育は1法人1施設というのが原則でした。しかし、待機児童問題解消対策が進むにつれて、施設整備も急速に進んでいます。その影響で1法人複数施設という運営形態もめずらしくなくなりました。中には、積極的に施設数を増やしている法人もあります。

 戦国武将に佐久間信盛という武将がいます。この武将は「退き佐久間」とも呼ばれています。他の隊に比べて「効率的に犠牲を少なく退く」ことが得意だったことに由来するそうです。つまり、至難といわれる撤退戦が上手かったということなのです。戦では攻めるのは誰でもできるけど、うまく退くのは誰にでもできないのです。

 登山でもそうですが、山の頂上まで登り、ふもとまで降りてこられなければ、単なる遭難です。事業もこれらと同じことがいえると思います。

 今は、保育施設整備に対して、すさまじい追い風が吹いています。そのような環境下で施設の数を増やすことは比較的容易にできるでしょう。しかしながら、増やしてしまった施設を維持、運営するのは至難の業です。

 人口減少にともない、少子化=園児確保、労働人口減少=職員確保が困難になります。1つの施設内での保育のレベルを維持するよりも、複数施設でレベルを維持する方が困難です。これは、数が多くなればなるほど、困難さも高まっていきます。

 そして、もっとも難しいのが「安全」です。施設を増やせば増やすほど、園児を増やせば増やすほど、事故の絶対数が増えます。死亡事故などの重大事故件数も増えます。そういった状況で、1件の死亡事故が発生したら、法人の評判が落ち、施設が連鎖的に閉園になる可能性も出てきます。

 ここでのポイントは施設を増やそうと考えたとき、撤退するときのことを考えて、用意周到に準備してから、拡大路線に取りかかっているかどうかです。

 経営者にとって最低限必要なリスクマネジメントは、常に最悪のことを想定して事業を展開することなのではないでしょうか。

2017.09.08