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重大事故と職員の離職率はリンクする?

重大事故と職員の離職率はリンクする?

保育施設の25% 保育士ら不足 人材取り合いも

 保育施設の4分の1は保育士らが足りず、うり2割弱は職員不足を理由に児童の受け入れを制限していることが、独立行政法人福祉医療機構の調査でわかった。政府は処遇改善策などで人員確保を目指しているが、「待機児童ゼロ」への課題が改めて浮き彫りになった形。

 調査は昨年9~10月、同機構の融資先の全国5726施設を対象にインターネットで実施。1615施設(28.2%)から有効回答を得た。25%の404施設が昨年9月1日時点で「不足あり」と回答。そのうち18.3%の74施設は児童の受け入れを制限していた。また、職員不足対策として21.3%の86施設では、時間外労働を増やしていた。

 2015年度に職員が辞めた1399施設に理由を聞くと、保育業界内での転職が29.8%、結婚が29.7%を占めた。「周辺に新設保育所や認定子ども園が急増し、競合している」との声があり、保育所間で人材の取り合いになっている状況もうかがえたという。

 職員の処遇改善については、16年度に92%の1485施設で昇給した。近年で昇給した施設では、平均で月額7746.1円増えた。同機構は「保育士確保は今後さらに難しくなる。中長期的に働き続ける体制整備が必要だ」とする。(2017年6月9日 朝日新聞)

保育士の2割「退職したい」千葉県調査 給与・待遇に不満浮き彫り

 県内で現役で働く保育士を対象に県が保育業界の実態調査を行った結果、回答者の約2割が「退職を考えている」と答え、その理由として最も多かったのが「給料が安いこと」だったことがわかった。一方、同じく待遇が不満で復帰意欲がない潜在保育士の約6割が「条件の改善次第では復帰する」と回答し、処遇を改善することで保育士不足が緩和する可能性のあることが浮き彫りになった。

 「保育士を辞めて他の職種で働きたい」などと退職の意向を示す約2割の現役保育士に理由を尋ねたところ、給料が安い。休暇が少ない。保育の仕事に対する不安があるーの順に多く、勤務条件への不満や仕事に対する不安感が大多数を占めた。(2017年6月9日 産経新聞)

 保育現場に保育士が定着しないのは、事故の発生確率とリンクすると考えられます。複数の施設でキャリアを重ねた保育士は、それなりに保育スキルはアップしていると思います。ただ、1つの施設の中で1人の園児の成長を見ていることによって、蓄積する特定の園児に対する想定などは、他のものに変えがたいものです。

 さらに、1つの施設の中に定着することによって生まれるチームワークも得がたいものです。重大事故の発生原因の1つには、施設内での職員同士のコミュニケーションエラーが必ず存在します。

 言ったつもり。聞いたつもり。確認したつもり。この積み重ねが大きな事故を誘発します。

 保育施設における最大リスクは、「園児の成長」です。園児は日々、成長することによって、体力も運動能力も変化しますし、興味の対象や気分も変わります。その日々の変化に対応するのは、職員同士の雑談による園児一人ひとりの情報交換です。

 知識や経験などを複数の人が持ちよることによって、作り上げられる「共有知」を毎日、職員が積み上げることによってしか、園児の「成長」による変化のリスクに対応することはできないのです。

 職員の定着と、職員間のコミュニケーションによって、共有知を積み上げていってください。

2017.07.14