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保育園の騒音問題に裁判所の判断が始めて下されました。

保育園の騒音問題に裁判所の判断が始めて下されました。

「保育園から騒音」近隣住民の請求棄却 神戸地裁

 保育園から聞こえる園児の声などによって精神的苦痛を受けているとして、神戸市東灘区の男性が自宅近くの保育園の運営法人に対し、慰謝料100万円と防音施設の設備を求めた訴訟で、神戸地裁は9日、請求を棄却した。

 裁判長は判決で「園児の声などの騒音レベルが社会生活上の限度を超えているとは認められない」と指摘。その上で「保育園の公共性をことさら重視し、受忍限度を緩やかに設定できない」と述べ、周辺への影響は、国などが定める通常の騒音規制を基準に判断すべきだとした。

 判決によると、保育園の定員は約120人。男性は「保育園の騒音で家族の会話もままならず、テレビの視聴にすら支障を来している」と主張していた。

 判決では、園児が園庭で遊ぶ時などに、園から約10メートル離れた男性宅に届く音の大きさが国が定める基準を上回らないと認めた。また、運営法人が開園前、1年ほどかけて近隣住民と騒音問題について協議し、一部の住民宅の窓を二重サッシにしたり、防音壁を設けたりしたことも踏まえ、男性の主張を退けた。

 運営法人の代理人弁護士は「園児の声が違法でないと認められ、意義のある判決」と評価した。(神戸新聞 2017年2月9日)

 保育園の騒音問題は数多く取りざたされていますが、初めて裁判所の判断が下されました。判決の内容によると、保育園といって特別扱いできないが、保育園の周りに住む住民の方々もガマンしなければならない範囲内の音などであれば、ガマンしてください。という内容です。

 現在、ネットには「保育園に落ちた通知が届いた」という保護者の声がたくさんあふれています。待機児童対策は、まったく進行していないように見えます。おそらく、子どもを預けて働きたい保護者の方々にとって、実感できるほど、改善されていないということでしょう。

 待機児童対策が進まない要因のひとつに保育園建設反対運動があるのは事実です。そして、この問題は地方部では起こりづらく、都市部に集中する傾向があります。つまり、人口が密集していて、土地も限られた場所で発生しがちなのです。

 ここで求められるのは、調整能力です。ここでいう調整とは、ある問題に関わっているすべての人々が等しく納得するように問題解決することではありません。調整とは誰かにとって望ましい結果は、誰かにとって望まない結果であることを分かった上で、望まない結果を受け入れてもらうように何らかの働きかけをすることだと思います。

 保育園の施設整備が行政の調整によって行われるという制度であるかぎり、この調整能力を地方行政従事者が早く身につけるか、そういう能力を持った人材を雇用することを早急にしなければならないでしょう。

 今回の判決結果内容をできるだけ早く学び、本気で待機児童対策問題に取り組んでいただきたいものです。

2017.02.10