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「うるさい」と保育施設に苦情、自治体の75%

 保育施設の子どもらが出す音や声を巡り、「うるさい」との苦情を受けたことがある自治体が、全国主要146自治体のうち109自治体(約75%)に上ることが読売新聞の調査でわかった。

 苦情が原因で、保育施設の開園を中止・延期したケースも計16件あり、施設の整備や運営が年々難しくなっている状況が浮き彫りになった。

 調査は昨年11~12月、保育ニーズの高い政令指定都市や県庁所在市、東京23区などの都市部に、昨年4月1日時点の待機児童が50人以上の市町村を加えた計150自治体に実施し、146自治体から回答を得た。

 2012~16年度の5年間に、建設計画段階のものを含む保育所や認定こども園への苦情を受けたことがあるのは109自治体。うち、5年間すべての件数を把握している43自治体では、12年度の計37件から15年度は計88件、16年度は12月までに既に計89件と増加傾向だった。(2017年1月8日 読売新聞)

 この調査結果が保育施設の整備に遅れや断念を招き、待機児童解消にも深刻な影響を及ぼしています。

 この調査結果の一方で、ある大学教授の方が調査した結果があります。その調査では、東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県の様々な地域の一戸建て住宅1927戸が対象で、約18%の341戸が答えたものです。「あなたの家の隣に保育園建設計画が起こったらどうしますか」との質問に「強く反対する」「反対する」と答えたのは計1割。そもそも反対は多くはなく、高齢者ほど反対するとの相関関係はみられなかったといいます。住宅街の住民が、商業・工業地域の住民より反対が多いこともなかったそうです。

 この大学教授の調査結果から、保育施設建設に反対するのは、閑静な住宅街にすむ高齢者というのは、偏ったイメージであると結論づけています。

 しかし、私どもの会社が保育施設建設と地域住民の反対運動の仲裁に入った事例では、ことごとく住宅街の高齢者が反対していました。そのような事例が揉めている現場では、ほとんどでした。

 この「もし、あなたの隣に保育園が・・・」というアンケート調査は、「もし、満員電車の中であなたが座っていて、その前にお年寄りが立っていたら、どうしますか」というものと同じなのではないでしょうか。ほとんどの人は、「そのお年寄りに席を譲る」と答えるでしょう。でも、実際でもそのようにするでしょうか?

 もし、そうするのであれば、シルバーシートは無用でしょう。つまり、知識やデータ=リアル(現実)ではないのです。

 社会の変化とともに、人間の本質も変化していきます。

 除夜の鐘の音も騒音という時代です。自分に関係ないものは、すべて必要ない。許容しない。したくない。という方々を説得しなければ問題解決しないようなことが社会問題化しています。そのような問題解決には、専門家の知恵やスキルを利用するもの一手だと考えます。

2017.02.03