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アイギスブログゼミナール 第3回 「企業寿命と企業生存率」

アイギスブログゼミナール 第3回 「企業寿命と企業生存率」

 昭和59年に日本経済新聞社から発行された「会社の寿命」のキーワードに「企業の寿命30年の法則」というものがあります。

 企業には必ず寿命があり、少数の事業にこだわり続けると、そう遠くない将来に衰退し、没落して行く。限りある寿命を延ばす唯一最大の方法は「変身」であり、その基本条件は働く人間が仲良しクラブではないことと、その組織がどのように変わっていくかということ。

 さらに、企業繁栄のピークはわずか30年、一業に固執し、環境適応できないと、名門・大企業といえども没落する。明治以来、百年の産業史の足取りを見れば、変身を忘れた進化なき企業は生き残れず、変身するためには規模の大小を問わず、リーダーたる経営者の人間的な努力に尽きる、と述べられています。

 次に、企業生存率(起業の成功率)、企業が生き残る数を表す数字を見てみましょう。

1年後:40%、5年後:15%、10年後:6%、20年後:0.3%、30年後:0.02%

 この数字の裏には、1年以内に60%の企業がなくなり、5年以内には85%の企業がなくなるということを表しています。このなくなった企業は、競争力のある(顧客が選んだ)企業が存続するための必要な犠牲なのです。

 では、この2つの統計を保育業界に当てはめてみましょう。現在、待機児童の増加と企業参入の規制緩和により、新規に起業する保育事業は数多く存在しています。しかし、新規事業参入者の1年後生存率は、ほぼ100%でしょう。つまり、顧客による選別が行われ、犠牲となる事業者が存在していないことになります。

 なぜ、そのようなことが実現可能なのでしょうか。それは、保育の需給バランスにあります。通常、企業や商品の質は需要(買いたい人)より、供給(売りたい人)の数が多い状態で発生します。質の向上も同じことが言えます。

 保育業界は、需要(預けたい人)よりも供給(預かれる施設)の方が、はるかに数が少ないのが現状です。そのような状況で、事業者の選別も質の向上も行われないのが正常なのです。

 現在、日本は急速に少子高齢化が進んでおり、2005年からは出生数を死亡数が上回る人口純減の状態が続き、その数が年々増えてきています。この波は保育業界にも必ず来て、需要(預けたい人)が供給(預かれる施設)を下回る状況になります。

 そのような状況下では、子どもを預けたい親による施設の選別が行われ、廃業しなければならない事業者も出てくるでしょう。そうした条件下で、事業者が生き残るためには、「変化」しかないでしょう。社会的な環境を正確に把握、分析し、保護者ニーズを捉え、自らの施設を変化させることができる事業者が残るのです。

 すでに人口減少は始まっています。今から、準備を始めていて損はないと思います。

2016.12.16