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東日本大震災関連の裁判で最大の判決が出ました。

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大川小津波訴訟 「7分前に危険性予見」 学校の過失を認定

 東日本大震災の津波で児童、教職員計84人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校を巡り、児童23人の遺族が市と県を相手取り約23億円の損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁は26日、市と県に総額14億2658万円の支払を命じた。高宮裁判長は「教員らは津波襲来の7分前には危険性を具体的に予見したのに、安全な裏山ではなく不適切な場所へ避難しようとした」と指摘し、学校の過失を認定した。

 裁判の大きな争点は2点。

(1)大川小への津波襲来を予見できたか

(2)安全な場所への避難は可能だったか

 判決はまず、校舎付近が震災までに大津波に襲われた経験がなく、ハザードマップの浸水予測区域外だったことから、震災前や地震直後の段階では襲来は予見できなかったとした。

 一方で当時の市職員の法定証言から、北上川河口への津波襲来や高台避難を呼びかける広報車が校舎前を午後3時半ごろに通り、7分後に実際に津波が襲ったと認定。「教員らは広報を聞いた段階で、大規模な津波が襲来し、児童に危険が生じることを予見したと認められる」と指摘した。

 教職員や児童らはその後、北上川の橋のたもとにある標高約7メートルの「三角地帯」と呼ばれる高台に向かう途中に津波にのまれた。市側は、遺族側が主張する裏山への避難について「山崩れや倒木の危険があった」と反論したが、判決は「児童らはシイタケの栽培学習で登っており、裏山への避難を決断すべきだった」として、学校側に過失があったと結論付けた。賠償額は慰謝料、逸失利益など児童1人について約5300万~6000万円とした。

 大川小の被災を巡っては、市が2013年2月に第三者検証委員会を設置。14年2月、被災の直接原因を「避難決断が遅れたこと」とする報告をまとめたが、その背景事情には踏み込まず、遺族が同年3月に市と、国家賠償法に基づき教職員の給与を負担する県の責任を問うため提訴した。(2016年10月26日 毎日新聞)

 ようやく大川小学校の第一審が終わりました。判決は学校側の敗訴になりました。原告側は23人でした。しかし、この学校の死者は70名、行方不明者は4名でした。もし、死者、行方不明者すべての遺族が原告側に加わっていたとしたら、損害賠償金額は約46億円になっていたと考えられます。

 損害賠償額の多寡が問題なのではなく、地震発生時の判断にはそれだけ重い責任が課せられているということなのです。

 今回の判決を見てみると、事前の対策に責任は問われていませんが、地震発生直後に入手した情報を元にするべきだった判断ができなかったことに過失が求められています。市が走らせた広報車によって、市立の小学校に責任が問われたという皮肉な結果を招いています。

 この判決を受けて、すべての施設には、地震発生時のとっさの判断に正確性が求められるようになったと考えられます。その対策として有効なことは、日常生活に災害対策を取り入れるということだと思います。日常から、地震が発生したときにはどう行動すべきか。大雨が集中して降ったときにはどう行動すべきか。ということを考え、いろんな方法を自分の頭の引き出しにストックしておくことしかないと思います。

 普段していないことは、いざというときも絶対にできません。大川小学校でも多くの被害者が出ています。この被害者の方々のかけがえのない命が失われたことに真摯に学ぶべきだと思います。

2016.10.28