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事故

さいたま市プール事故裁判②

さいたま市プール事故裁判②

 2017年さいたま市の保育施設のプールで園児の死亡事故が発生した刑事裁判の傍聴報告の第2回目です。

 刑事裁判では検察官側が罪を問われている被告人がどのような行為をし、そしてその行為が何罪に該当するのかを主張します。被告人がどのような行為をしたのかということを起訴状の朗読という形で、裁判所で検察官が読み上げます。被告人がどのような行為をしたのかということを刑事裁判では公訴事実といいます。被告人の弁護士が無罪を主張する場合はこの公訴事実を否定する訴訟活動を行うことになります。

 今回の刑事裁判の被告人は元園長、元職員の2名です。検察官側は両名に対して業務上過失致死罪(刑法第211条)に該当する行為があったと主張しました。業務上過失致死罪の条文には「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」と書いてあります。今回の裁判で問題になるのは元園長と元職員が「必要な注意を怠った」かどうかです。「必要な注意を怠った」とは過失があったことをさします。つまり、過失の有無が問題になるのです。仮に元園長と元職員に過失が無ければ無罪になります。

 検察官は公訴事実で、元園長の過失は、指導する職員と監視する職員を分けるなど、園児の動静を把握し、何かあれば速やかに園児を救助する体制を作らなかったこと。このような体制を作ることができないのであればプールの中止を決定すべきなのにこれをしなかったこと。と主張しました。元職員の過失は、園児の動静を見て速やかに救助する義務があったのに、これを行わなかったこと。と主張しました。

 この検察官の主張に対しての元園長の弁護士と元職員の弁護士の反応は「認める」です。これは、元園長の弁護士と元職員の弁護士が今回の裁判において無罪を主張しないことを意味します。

 さて、公訴事実中の元園長と元職員の過失について、何か見覚えはありませんか?次回のブログにおいては公訴事実中の元園長と元職員の過失について掘り下げていきます。

2019.10.16