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保育施設を利用する方にもリスクマネジメント能力が必要?

保育施設を利用する方にもリスクマネジメント能力が必要?

ベビーホテルで女児死亡 検証委 都も指導不足

 2016年、東京・蒲田のベビーホテルで、生後6カ月の女児が死亡した事故について、都の検証委員会が報告書をまとめた。

 都の報告書では、「事故が起きた際にいた職員2人は、共に保育資格を持っておらず、都の対応についても、改善指導を行っていたものの、日常的な指導が不足していた」としている。

 女児の母親は、「このままだと、娘のように、また亡くなる子が増える一方だと正直思っているので、都や法律が変わってくれることを願います」と語った。(2018年3月28日 フジテレビ)

 自分の子どもを保育施設に預けるときに、「この施設に自分の子どもを預けて、命に危険がおよぶ可能性はないのだろうか」というところまで、考える親はどのくらいいるのでしょうか。

 私どもの会社は、保育施設の事故に特化した仕事をしているので、仕事柄、保育施設のリアルな安全度を肌で感じています。その経験からすると、正直、安全から保育を考えている施設は、日本にはほとんど存在していないのではないかというのが感覚的な感想です。

 その原因は、今回の東京都の検証委員会が出した報告書を読めば、わかると思うので、以下、解説してまいります。

 検証委員会が提言の中でまとめている大きなポイントは、

 ①これまで認可外保育施設の監査を担ってきた都に加えて、市区町村による巡回指導が必要。都からはこうした自治体に対する財政支援政策などを進めるべき。

 ②都は保護者が保育施設を選ぶ際に、安心して預けられる場所か判断するための情報をもっと発信するべき。

 ③国はこれまで待機児童問題解消のために、保育施設が受け入れられる「量」の拡大に注力してきたが、「質」の改善・向上のために、自治体に任せずに対処するべき。(BuzzFeeDJAPANより一部抜粋)

 まず、①は、この対策をそのまま実行する前に、行政に保育現場の安全に関する専門家を育成するべきだと思います。安全の素人が現場を見て、事故防止に効果のない項目に基づくチェックリストに従って監査したとしても安全面では何も変わらないからです。

 ②は、すぐにできて、かつ意味のある対策だと思います。ただ、その元となる安全に関するデータをどのようにして作成するかという課題は残ると思います。

 ③は、正論だとは思いますが、国が現在の保育に対する舵取りの方向性は変えないでしょう。したがって、期待しても意味はないと思います。

 そもそも、都の検証委員会の構成員を見てみますと、医者が1人、弁護士が1人、学者が3人、団体の代表が2人の計7人です。一見すると専門家の集まりに見えますが、この中に保育事故の専門家がいません。だから、通り一遍の分析になってしまい、再発予防策も「絵に描いた餅」になってしまうのです。

 保育業界の安全レベルを上げるためには、まず、保育現場の事故データを1件でも多く集め、「保育事故のビッグデータ」を作ること。これは、現在、内閣府がしていますが、保育現場で気軽に生かせるようなデータベースには、まだなっていません。

 次に、事故データを生かして、保育現場の安全に関する専門家を育成すること。これは、保育現場、行政、事故検証の場、すべてに必要だと思います。

 事故が発生し、犠牲者が出たときには、同じような事故による犠牲者を出さないようにすることが、最善であり、それしかできません。一刻も早く、事故に対して真剣に向き合う仕組みを作るべきだと思います。

2018.03.30