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事故

ついに具体的な動きが始まります。

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保育施設の巡回指導を強化 福島県 重大事故防止へ

 全国的に認可外施設などの保育施設で子どもの死亡事故が後を絶たず、保育の質の確保が問われる中、福島県は、県内の保育施設の巡回指導を強化する。年度ごとの定期監査の際に行ってきた従来の巡回指導を見直し、訪問回数を増やすなどして、施設側に安全マニュアルの構築や安全意識の徹底を求める。

 国は今年9月、認可外施設で子どもの死亡やけがなどの重大事故が起きた場合、自治体への報告を義務付ける方針を決定。事故の詳しい状況を調べ、原因の分析と再発防止につなげるため、県も国の方針を踏まえ、県社会福祉審議会の児童福祉専門分科会内に新たに「保育施設安全対策部会」を設置。県内の認可外施設で重大事故が発生した場合に専門家が検証する。

 巡回指導の強化も重大事故防止に向けた対応で、県子育て支援課の担当職員が対象施設を訪問し、保育施設の事故防止に向けた国のガイドラインに基づき数十項目を確認する。対象となる県内約500施設のうち、既に100以上の施設で巡回指導を実施。「屋外遊具のぐらつき」や「コンセントカバー設置」などの項目について指摘し、改善を求めた。

 県は対象施設について「安全対策はおおむねできている」と評価している。しかし、認可施設などに入れない待機児童が増加傾向にあるほか、認可外施設が認可施設に比べ、一般的に子ども1人当たりの保育士の数が少なかったり、面積が狭かったりするなどの現状も踏まえ、巡回指導のほか、施設管理者を対象に研修会も開き、重大事故防止を図る。(2017年11月4日 福島民友)

 保育が新制度に移行する少し前から、現在まで、国は安全に関するさまざまな法令や仕組みを整備してきました。その内容はこれまでにない具体的、かつ、事故防止に有効な対策と認めることができるものだと思います。

 しかし、その有効策が全国の保育現場に浸透しているか、というと、ほとんど浸透していないと言わざるを得ないのが現状だと思います。たとえば、今回の記事の中に出てきている「ガイドライン」すら読んでいない施設長や職員の方が多数を占めると思います。

 そのような状況を改善するためには、行政の立ち入り調査や監査などによって、指導するのが最も早い方法だと思います。その点で、福島県の取り組みは、大きく評価すべきものだと思います。

 重大事故が発生してから、行政は施設を厳しく調査したり、指導したりすることが通例なのですが、そのようなことをしても、被害園児や家族にとってみれば、園児が被った被害がなくなる訳ではないので、まったく意味のないものです。

 重大事故が発生してから行政が動くよりも、発生する前に、重大事故予防策が各施設でどこまで進んでいるのかを把握し、適切なレベルまで指導によって引き上げることの方が、大きな意味を持つと思います。

 安全は、保育施設にとって、質として問われるものではありません。安全は保育をする上での前提条件です。本来は、安全な環境や仕組み、職員への安全教育が一定レベルまでできていない施設には、保育をすること自体認めてはいけないのです。

 保育制度は安全を後回しにして、整備して来た歴史的な流れがあります。その流れを断ち切るために、国は本腰を入れて、安全体制を整えています。国の方針を正確に理解し、実行するように地方自治体と保育施設が協力して、安全体制を築き上げなければならないのが、「今」なのです。

2017.11.10