事故・トラブル最前線

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事故

どう考えても保育の質は行政の質です。

どう考えても保育の質は行政の質です。

保育園児死亡 指導監査体制も不十分 大阪市検証部会

 大阪市淀川区の認可外保育園「たんぽぽの国」(閉園)で昨年4月、うつぶせ状態で昼寝をしていた男児(当時1歳)が死亡した事故を巡り、有識者でつくる市の検証部会は6日、園のマニュアル整備や市の指導監査体制が不十分だったとする報告書をまとめた。これを受けて男児の両親が記者会見し、男児の名前を明かした。母親は「園が本来すべきことをやっていたら息子は死なずに済んだ」と訴えた。

 報告書によると、園児は入園初日の昼寝中に心肺停止状態となり、病院に運ばれたが死亡した。死因は窒息死だった。園には睡眠時の安全確認マニュアルがなく、園児の顔色や呼吸を確認していなかった。119番通報は園児の異変に気づいてから約20分後と遅かった。

 報告書は、事故直後の園への立ち入り調査で、保育従事者が1人の時間帯があるなどの不備が見つかったことから、市の指導監査体制を問題視。事前通告なしの立ち入り調査や0~1歳児のうつぶせ寝禁止の徹底を求めた。

 父親は「認可も認可外も職員の配置基準を同じにしないと安全な保育につながらない」と指摘した。(2017年7月6日 毎日新聞)

 今回の事例が起きたのは、平成28年4月です。ということは、保育業界の安全面でいうと、平成27年4月に施行された内閣府令39号第32条によって、安全対策が法的に義務化されています。さらに平成28年3月31日には内閣府から安全に関する「ガイドライン」も出ています。

 それらの観点から、今回の事故にはいくつかの指摘事項が出てまいります。

①安全確認マニュアルがない

②睡眠時のチェック体制が整っていない

③救急車の要請が遅い

④保育士の配置に問題がある

以上の4点は前出の内閣府令とガイドラインの内容に照らし合わせて、法的に求められている安全体制が構築できていなかった点として、指摘されるでしょう。

 以前にもこのブログの場で申し上げたと思いますが、内閣府令やガイドラインに書かれている内容は、保育現場が守らなければならない義務があります。一方、保育施設を管理する行政には、それらに書かれている内容を守らせる義務があります。

 つまり、安全に関するルールができたとしても、守っていない保育施設があったり、守らせようとしていない行政が存在している限り、「仏作って魂いれず」という状態だと思います。

 現在、保育現場で起きている園児の死亡事故は、今回と同じようなパターンで起きています。これから、どのタイミングで「指導監査にも問題があった」という文言が事故検証報告書から消えるのかが、保育の質が向上するきっかけになると思います。その環境が整うまでは、保育の質に関する議論は時期尚早でしょう。

2017.07.28