事故・トラブル最前線

事故・トラブル最前線これからの時代の園経営や
危機管理の在り方を専門家が語る

事故

幼児うつぶせ死事故が示談を迎えました。

幼児うつぶせ死事故が示談を迎えました。

幼児うつぶせ死 大阪・八尾市 預け先と和解

 地域住民が乳幼児らの子育て支援をする「ファミリー・サポート・センター事業」で、預けた幼い長女が亡くなったのはうつぶせ寝が原因だったとして、両親が事業主体の大阪府八尾市や預け先の女性などに約7900万円の損害賠償を求めた訴訟が3日、大阪地裁で和解した。女性が両親に和解金4000万円を支払い、市側は哀悼の意を表明する内容。市側への賠償請求の放棄などでも合意した。

 両親は当時、八尾市に住んでいた公務員の夫(37)と妻(37)。訴状によると、妻は2010年11月、八尾市側に紹介された女性宅に、生後5カ月だった長女を約1時間預けた。長女はうつぶせで寝かせられていた間に体調が急変。病院に運ばれたが、重度の脳障害を負い、4年前に3歳で亡くなった。

 両親側は裁判で、うつぶせ寝に関する厚生労働省の指導監督基準を踏まえ、「窒息など危険性が高いことは広く認識されていた」と主張。市側は女性に適切な研修を行う義務を怠ったとした。一方、市側は「事故の責任は当事者にある」と反論していた。

 両親の代理人弁護士によると、地裁は昨年12月、「市側の責任を認めるのは難しい」と説明した上で、双方に和解を勧告していた。

 八尾市長は「幼い命が失われたことを重く受け止め、子どもの安心安全に最大限努力したい」との談話を出した。(毎日新聞 2017年3月3日)

 まず、専門的なことから解説いたしますと、和解金が1000万円を超えるものは、支払う側の責任が認められたという意味合いを持つそうです。つまり、この事案は責任の所在はさておき、和解で話を終わらせましょうというものではなく、預かった側に責任を認めた上で、和解による解決をしたということです。

 また、「市側の責任を認めるのは難しい」という点も注目すべきだと思います。ファミリーサポートセンター事業という市が管理している事業なのにも関わらず、そこに登録する人材の選定、教育、管理などには、万が一のことがあっても市に責任は問われないというあまりにも難易度の高い制度なのです。

 要するに、制度はやってます。人もいます。利用の際の安全に関しては、利用者の自己責任となりますので、十分な注意を払ってご利用ください。という理不尽な制度です。

 やはり、最低限の安全は、事業者側が保証しなければならないのではないでしょうか。

 保育施設を利用する方々は、行政が安全面を厳しくチェックし、管理しているという風に思い込んでいるのではないでしょうか。そういう状況で利用を開始し、自分の子どもが死亡事故に遭い、初めて安全ではなかったと気づく。という最悪の展開も現実にあるのです。

 事例もたった1時間預けただけで、重体になり、2年半意識不明の状態が続き、死亡したのです。

 行政と事業者は安全対策を重点的に強化すべきですし、利用者は「保育施設は安全」という妄想を捨て、預け先の選定に安全面を加えていただけたらと思います。

2017.03.10