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事故

川口市と東京都が事故検証報告書を出しました

川口市と東京都が事故検証報告書を出しました

川口の保育所男児死亡で市検証委「保育の質が不十分」

 川口市の認可外保育所で平成27年9月、3カ月の男児が死亡した事故で、弁護士や小児科医らからなる市の事故検証委員会は22日、市長へ報告書を提出した。報告書では保育の質が不十分だったことを指摘、事故防止マニュアル作成や保育従事者の研修の充実などを提言した。

 報告書によると、施設では泣き続けている男児をベッドに寝かせたままであやさなかったり、母親から頼まれたのに施設内の連絡不備でミルクを飲ませなかったりと、十分なケアがなされていなかった。

 市長は「財政的に支援が必要なものは予算を確保する」と、保育人員確保のための支援施策などを検討すると表明した。

 男児の両親は同日、市内で会見し、父親(35)は「再発防止の提言が少なく内容も抽象的だ。市の今後の対応を見守りたい」と硬い表情で話した。

 報告書などによると、男児は平成27年9月1日、認可外保育所に預けられた約1時間後に、ベビーベッドでうつぶせになり呼吸をしていない状態で保育士に発見され、翌日死亡した。(産経新聞 2017年2月23日)

保育施設の男児うつぶせ死「経験浅い」 都の検証委報告

 東京都中央区の認可外保育施設で2016年に1歳(当時)の男児が死亡した事故について、都の検証委員会が8日、原因や課題を報告書にまとめた。国が昨年出した通知に基づく措置で、都内の事故検証は初めて。施設の不十分な態勢を指摘し、行政の指導強化も求めた。

 施設は「キッズスクウェア日本橋室町」。都によると、2016年3月11日、昼寝をしていた男児がぐったりした状態で職員に発見され、病院で死亡が確認された。

 報告書によると、男児は昼寝の途中で目覚めて泣くことがあるため、別室で1人で寝かされており、少なくとも50分間、誰も様子を見ていなかった。発見時はうつぶせ寝で心肺停止状態だったが、職員の救命措置が遅れた。死因については、警察に情報提供を求めたが「個人情報のため開示できない」と断られたという。

 施設は、基準を満たす職員数を配置していたが、施設長を含めた保育士の経験年数が1~4年と短く、乳幼児突然死症候群(SIDS)や昼寝の際の窒息の危険性、応急処置に関する知識が不十分だった。丁寧に保育しなければならないという共通認識が薄く、別室に寝かせたままにするなどしていたことが、事故につながったなどと指摘した。(朝日新聞 2017年3月8日)

 平成28年3月31日に各省庁から出された「地方自治体による教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的な検証について」の中では、以下のように定められています。

 死亡事故については事例ごとに行うこと。

 検証の実施主体については、「認可外保育施設」及び「認可外の居宅訪問型保育事業」における事故に関しては都道府県(指定都市、中核市を含む)とし、「特定教育・保育施設」、「特定地域型保育事業」、「地域子ども・子育て支援事業」における事故に関しては市町村とする。

 都道府県又は市町村が検証を実施する死亡事故等の重大事故以外の事故やいわゆるヒヤリハット事例等については、各施設・事業者等において検証を実施する。

 この通知に基づき、川口市と東京都は事故の検証を実施し、今回、その結果が出たというわけです。これらの検証によって、今、保育現場で問題になっているところが具体的に浮き彫りになってくると考えられるので、良い取り組みだと思います。

 川口市の検証結果では、事故防止マニュアルと研修が行われていなかったことが指摘され、東京都のものでは、経験不足による知識不足が指摘されています。

 安全とは、過去の失敗や事故から、その原因を抽出し、対応策を講じ、それらを未来に向かって生かすことで少しずつできてくるものです。つまり、ここでいう対応策は知識ではなく、知恵でなければなりません。

 そして、その知恵を共有するためにマニュアルや園内研修という手段を用いて行う。ということです。ですから、東京都が指摘するように、経験年数が浅いから知識が不足していたという指摘は許されないのです。

 安全に関する知恵は、経験年数に関わらず、保育に関わっているすべての職員が同じレベルで頭に入れておかなければならず、同じレベルのことが現場でできなければならないのです。

 そういったことを現場で実現するために施設の運営者は、マニュアル作成や研修の実施をしなければならないし、それらの施設を管理監督する行政は、できているかのチェックをしなければならないのです。

 保育施設は急ピッチで作っているけど、作ったあとは「ほったらかし」では意味がないのです。現場の職員、施設事業者、自治体が三位一体で安全に取り組まなければ、保育現場に安全はいつまでたっても保証されないでしょう。

2017.03.17