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その同意書本当に必要?

その同意書本当に必要?

 弊社の24時間相談ダイヤルに寄せられるご相談で、保護者の方から同意書を取りたいがどのような文章にしたらいいですか?というご相談が定期的に寄せられます。

 このようなご相談には、同意書をどのような文章にしたらいいかと考えるよりも前に、なぜその同意書を作成するのかを一緒に考えます。

 なぜなら、同意書を作成する目的を考えることによって、そもそも同意書を取ることが本当に必要か判断できるからです。

 分かりやすい例でいうと、重要事項説明書の同意書はなぜ取らなければいけないかというと、保護者の方に入園に先立ち園の実情を説明しそのことに関して同意を取ることが法令上(内閣府令第39号第5条第1項)求められているからです。

 また、園内での写真や動画撮影の同意書はどうでしょうか?写真や動画撮影により園児の容姿が撮影されてしまいます。これは園児の肖像権やプライバシー権の侵害が法律的に問題になります。そのため、肖像権やプライバシー権の侵害が予想される園児から、あらかじめ容姿を撮影されることへの同意を取ることによって適法な撮影にするわけです。園児は未成年者であるため園児の代わりに親が同意する必要があります。

 少し難しい例をあげます。骨折してしまった園児さんは本来であれば、家庭保育をお願いしているところ、お仕事やご家庭の事情で家庭保育ができないから登園させて欲しいと保護者から依頼された場合に、園内での事故に関して園では責任を負わない旨の同意書は取る必要があるでしょうか?

 このような同意書を取ったとしても、万が一、園内で事故が起きてしまった場合、園の責任は免れません。園で事故が起きている以上どのような同意書を取っていても園の責任は発生してしまいます。(この点をザックリと説明すると民法第90条の公序良俗違反で同意書は無効になります。)みなさまにイメージとして持っておいて頂きたいのは、園内での事故の責任は園にはない、というような同意書は法律的には無効になります。

 であれば上記の同意書を取る目的は、法律的な意味はなく、骨折をしている園児は集団保育中に二次被害にあいやすいことを予め保護者の方に説明し、理解してもらうことにあるといえます。そうすると文章で同意書を取らなくても、口頭でお話すれば足りる話です。同意書は保護者からすると、園の責任転嫁などの不信感につながってしまう可能性があるものです、そのため不必要な同意書を取る必要はありません。

 このように同意書は同意を取る目的を考えることで必要かどうか判断することができます。とりあえず同意書を取って責任回避しようという姿勢は危機対応(事故・トラブル後の対応)において致命的なミスを招いてしまいます。しっかりと同意書を取る目的を考えるようにしてください

2021.01.06